昨日、杉本曉子さんの上映会とトークのTwitter中継ログをまとめて記事にしました。
会場がこんなに元気な上映会は初めてかも。打ち上げでは久しぶりに杉本さんと話せて嬉しかった。
同年代の女性が、本気で勝負してる姿に刺激を受けた。私も頑張ろう、と思った。
12月23日、フォーラム南太田での上映会「海岸通団地物語〜そして、女たちの人生は続く」上映後の杉本曉子監督トークです。海岸通団地は、みなとみらいのすぐ近く、都会の中にぽつんと取り残されたような光景は一度目にすると忘れられない場所です。30名ほどの参加者には、団地のことを気にかけていた方、よく知っている方も多く、会場からの発言が止まらないトークは大いに盛り上がりました。
「海岸通団地物語〜そして、女たちの人生は続く」杉本曉子監督トーク
司会:TAEZ!小園弥生さん
小園:映画制作のきっかけは?
杉本:映像制作会社を辞めて5年、派遣の仕事をしながら、また何か撮りたいと思って横浜を歩いていると、以前から気になっていた団地に目がとまり、撮り始め通うようになりました。最初は警戒されたが少しずつ住民と打ち解け、映画を楽しみにしてもらえるようになりました。昼は派遣の仕事、夜はバイト、休日は撮影。夏の外の撮影では熱射病にもなりました。今年の山形国際映画祭にも応募しましたが落選。でもその後10~11月のヨコハマ国際映像祭の国内長編部門として上映され、そのときは団地の方も見に来てくれました。上映をきっかけに主人公の画家、平山さんの水彩画は映像祭新港ピア会場のラボスペースで展示もされました。
会場:大晦日はたくさんのカメラ回っていたようですが。
杉本:4人体制でした。私は平山さん宅、スタッフ3人は打越さん宅(テレビが故障して上3分の1が映らない家の人)、外で花火の映像と音をそれぞれ担当しました。
会場:撮影は誰かの紹介で始められたのか。
杉本:取材はじめは、団地の管理事務所で断られ、市に電話すると都市機構といわれ、そこともうまくいかず、最後にヨコハマ経済新聞で自治会長でもある平山さんが出ていて、そこに連絡しました。
会場:団地の立替反対運動という意味にもなりそうだが
杉本:立替反対という意味ではなく、撮影していく中で、すんでいる人に惹かれていきました。それを表現しています。
小園:団地の皆さんに見せたときは?
杉本:みんな盛り上がったが、主人公平山さんだけは、こんなに私が映っているなんてと言われ、数時間話合いました。最終的には、立替のことを人の魅力を通じて伝えたい、という気持ちをわかってくれました。平山さんも画家で同じ表現者だから、表現したいという強い気持ちをわかってくれたのだと思います。私は、映像の世界にまた戻りたい、その最後のチャンスかも、って思って映画を作りました。すべての責任を負うつもりで作りましたが、一方で出演者の皆さんを傷つけたくない、満足してもらいたい、という気持ちも強かったので粘り強く説得しました。その上映が一番緊張し、胃が痛くなりました。それでも団地の皆さんに見せ、向かい合いました。
会場:幼い頃からの映画監督の夢だそうですが、第1回の監督作品の感触は。
杉本:実は昨日も映画美学校で強く批判されました。外からの窓のカットだけはよかったよね、とも言われ(笑)。でも今日はこれだけの方に見てもらえて、とても嬉しいです。団地の皆さんとの関係性も続いています。実は今年の大晦日も撮りに行くんです。まだ家を撮らせてくれないチョコレート(ゴディバ)をくれた男性も今年は何かしら協力してくれると言って下さってとても楽しみです。
会場:主人公の平山さんの知り合いです。個展に行き、お家にも行き、凛としてて素敵な人と思っていた。こんな人生があったとは、とびっくりした。かなりオープンに表現されているので覚悟をもって出演されたと思いました。人の人生を他人の都合で切り取るわけにはいかないと思うので、これからも平山さんの応援を。
杉本:どこのだれかもわからない人に、ここまで撮らせてくれる平山さんの懐の大きさも感じています。命がけで作らなければと思いました。私はもう失うものはない、と思っていますし、制作会社時代には自分が気取っていては撮れないと学びました。その気持ちで取材対象にも向かいました。
会場:写真家の森日出男さんを映した理由は。
杉本:外側の関係から団地を撮る森さんのノスタルジー感と、内側から撮る自分と対照させるため、重要なキーパーソンとして撮りました。
会場:友人が海岸通団地に住んでいますが、なぜあの女性3人を撮ったのか。
杉本:一人で団地で暮らす女性にたいしてのイメージを変えたかった。凛としてこびない姿のある女性たちです。
会場:下からのアングルが多い。見る人にとっては少しよくない。工夫が必要では。監督自身がまだ正面きって向かい合えてないのでは。
杉本:ありがとうございます。制作会社勤務の時からの癖で下に構えてしまいます。また目を見て話を聞きたいから、胸の前で構えたり、置きで撮ったりしてしまいます。人手が足りないのも大きな原因で、協力者も募集中です。ぜひ撮影、制作にご協力ください。
会場:元中区職員です。団地については、人の増減、建物が立つ、無くなるという動きとしかとらえてなかった。団地の人の暮らしを初めて見た。
小園:団地の人はみな立替終わっても住めるのか。
杉本:希望すれば住めるが、家賃問題もあります。家賃が高くなりすぎないよう、町内会でも交渉を進めています。
会場:誰もこの団地立替を知らない、あまり問題を大きくしないよう、行政は隠しているのでは。
杉本:耐震構造がよくなる、新しい建物になる、はみなさんOKで、家賃問題だけが大きいようです。私は、あの古い団地自体が魅力的だと思うのですが。森日出男さんには「横浜の人は、新しいこと変わることをすぐに受け入れる」と聞きましたが、その通りかもしれません。
会場:都橋で週末カフェバーをやっています。あそこも古くて素敵です。古いもの好きもいますよ。
杉本:そういえば横浜の森ビル建設は中断しているようですね、住民のみなさんは鉄槌食らったと言っています(笑)。
会場:倉庫は1棟だけ残すって聞きました。
杉本:そうですか。そうそう道路拡張で木を切ってしまうことに住民が反対し、都市機構も同意したこともあったそうです。この団地は、周辺の開発から忘れられたような風景と住民が言います。私もそう思います。
会場:続編の内容は。
杉本:弁天、伊勢佐木の歴史は残っているが、海岸通の歴史はあまりないんです。そこを紐解きたいなと。団地は2年後にはマンションになります。最後は引越しを終えてそこでの大晦日も撮りたいです。
会場:工事遅れているから2年で終わるかどうか。
会場:立替反対運動はなかったのか。
杉本:反対運動が落ち着いた頃に撮影を始めました。今は家賃の値下運動をしています。年齢によって半額にならない人もいて生活が苦しくなるのは目に見えているんです。
会場:男性バージョンの番外編を。
杉本:そうですね。どんな人もドラマをもっていますね。それが好きです。私自身が惹かれるものを撮っていますが、濃密なドラマのある夫婦も素敵でした。
小園:撮影スタッフの方はどう思っていますか。
スタッフ(守):杉本さんは100回以上団地に通っているけど、最初はどこがいいんだろうと思っていました。現在は試写や上映会に毎回参加しています。今回はどんな人が来るのか、どきどきしながら来ました。
会場:面白かったです。辛口なモダン画家。岩手の羊羹をくれる横浜のおばさんの家でかかる歌謡曲。対比が楽しく。上3分の1が映らないテレビが最後に見れてよかった。
会場:みなとみらいに行くたびに気になっていた団地。20代に公団住宅に3年住んだ。半永久的に住む人の人生がつまっている団地の映画でしたね。私があそこに暮らしていたら、と想像しながら見た。
杉本:すべての部屋に表情がある。そこをもっと見せたいです。もっと多くの人の家を撮りたいと思っています。皆さんの感想が私の力になります。あと2年、心が折れそうになってもがんばります。今日は本当にありがとうございました。